価格交渉・価格転嫁の取組事例
「安売りしない」決意で月会費を2倍に、既存顧客への丁寧な説明でキャッシュフローが大幅改善
- ブランド力向上
- 交渉の工夫
- 競合調査
公開日
取組のポイント
- 少子化・晩婚化・マッチングアプリ台頭で新規会員数が伸びず、廉価プランで客単価も低下
- 固定費をまかなう価格水準を試算し月会費2倍が必要と判明、値上げと退会率のシミュレーションを実施
- 丁寧な説明で月会費を約2倍へ、退会率を7.5%に抑制し、きめ細かい対応力を前面に出す戦略へ転換
価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題
当社は、愛媛県松山市で地域密着型の結婚相談サービスを提供しています。2001年の創業(2006年に法人化)以来、結婚相談業にありがちな年収や職業など、条件重視のマッチングとは一線を画し、人柄や価値観を重視するマッチングを行っています。
近年は少子化や晩婚化、マッチングアプリの台頭など外部環境の変化で、思うように新規会員数が伸びない状況が続いていました。厳しい経済状況の中、若い会員の負担を抑える廉価プランの新設など、結婚を真剣に考える人々に向けた施策を多く打ち出してきました。
残念ながら、それらの施策は会員増に結びつかず、廉価プランを導入したことで平均客単価の低下も招いてしまい、業績が下がってしまいました。
また、昨今の労務費の上昇およびエネルギーコストの高騰により、従来の価格体系では収支の維持が困難となったことを背景に、このままでは理想とする結婚相談業が続けられないと考え、価格転嫁による経営改善を目指すことになりました。
取組を行った内容
まず、過去の決算書の分析を行いました。当社はサービス業であるため、製造業や建設業のように仕入や製造原価を考える必要がなく、決算書の構造自体はとてもシンプルでした。
販売費及び一般管理費をそのまま固定費とみなし、原価がないため売上をそのまま粗利とみなすことで、「売上で固定費をまかなう」ことが計数上の経営目標になることを理解しました。
次に、「売上で販売費や一般管理費などの固定費をまかなう」ための価格水準がどのくらいかを試算しました。その結果、現状の平均客単価(月会費)を2倍程度上げなければいけないことが分かりました。
それでも同業他社に比べ同水準か少し低い額でしたが、物価高だけを理由に2倍の値上げを行うことはさすがに理解を得られないと考えました。
そこで、他社提携によるマッチング機会の増加などの付加価値訴求案と、綿密な値上げスケジュールを作り、価格転嫁を実施することになりました。また、値上げによる顧客離脱(退会)も想定されるため、表計算ソフトを使って値上げ額と退会率のシミュレーションを行いました。
取組を行ったことにより得られた効果
既存会員に対し、丁寧な説明を行った上で月会費をほぼ2倍に引き上げました。
2割程度退会者が出ることは覚悟しましたが、実際の退会率は7.5%にとどまりました。その結果、毎月のキャッシュフローが大きく改善し、事業基盤を強くすることができました。
新規顧客については、価格面での優位性が小さくなった代わりに、当社のもともとの強みであるきめの細かい対応力を前面に出すことを強く意識するようになりました。
今回の取組を契機として、ネット・SNS・紙媒体においてプロモーションを強化するとともに、コロナで消極的になっていた対面イベントの企画にも、今後は積極的に挑戦していきたいと考えています。
すべての経営者は、自社の商品やサービスを一人でも多くの人に使ってもらいたいと思っています。そのため、値付けの際はどうしても価格を低めに設定してしまう傾向があります。商品やサービスに対する熱い思いと、価格がアンバランスになってしまうのです。
これを防ぐためには、原価の意識を強く持つこと、同業他社の価格を分析することが大切です。そして、最も大事なのは、「自分の商品を安売りしない」「自分自身を安売りしない」という、事業者としての強いプライドを持つことだと思います。
顧客が商品・サービスを選ぶ基準は様々です。確かに価格は大きな基準の一つですが、何とか価格以外の基準(品質・納期・数量・アフターサービスなど)で勝負できないか?を考えつづけることが、経営者の一番大事な仕事ではないでしょうか。
株式会社VOCE
愛媛県の独身の方々に、人生設計の中で、より幸せを実感できる結婚をするために、「自分を知り、自分で判断する」、安心した出会いを提供する場所として2001年に開設しました。婚活スタイルの変化が著しい中、お一人おひとりを知る“仲人”が、結婚の本質である「人を愛し、愛を育むことの証」についてお伝えしながら、喜びと悩みを共有し、常に支えながら、お二人の心と心をつなぐプロデュースを続けています。
- 所在地
- 愛媛県松山市本町3丁目2-14 7’S STORIESビル2F
- 業種
- 生活関連サービス業、娯楽業

