価格交渉・価格転嫁の取組事例
5年間で1.5倍の価格転嫁を実現!誠実な説明で築く信頼と納得の価格改定
- コスト上昇調査
- ブランド力向上
- 交渉の工夫
公開日
取組のポイント
- 餌代の高騰に対し、5年間で段階的に50%の価格転嫁を実施
- 需要期の12月に合わせた年1回改定と1ヶ月前告知で顧客の心理的な受容性を高める
- 原価率を数字で示す誠実な説明とブランド価値訴求で取引先・消費者の理解を獲得
価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題
ブランド卵を生産・販売する当社では、コロナ後のウクライナ情勢を背景に餌代が大幅に高騰し、経営を圧迫していました。
卵生産において原価の5割から6割を占める餌は基本的に輸入品であり、為替や原油価格の影響を受けて10年前と比較すると約2倍に達しました。コロナ明けの早い段階から高止まりが続き、その後も賃金や燃料など全てのコストが上昇する構造変化が進行していました。
必要な利益を確保し経営を持続させるためには適切な価格転嫁が不可欠であり、周囲の動向も見ながら段階的に価格改定を進めなければ、品質維持と従業員の待遇確保が困難になるという課題を抱えていました。
取組を行った内容
BtoB(Business to Business:企業が企業に対して商品やサービスを提供する、企業同士のビジネス)・BtoC(Business to Consumer:企業から一般消費者へ商品やサービスを提供するビジネス)両チャネルで5年間に約50%の価格改定を毎年段階的に実施しました。
価格転嫁のポイントは、事前告知と誠実な説明、そしてブランド力を活かした価値訴求です。
まず飲食店などのBtoB取引先に対しては、需要期である12月に合わせて11月頃から1ヶ月前に案内し、原価率が何によってどれだけ上昇したかを数字で示しながら「これだけ上がるので、これだけの値上げをお願いします」と具体的に説明しました。
BtoC向けの直売所では、値上げ前に告知を行うとともに、値上げ直後は一時的な割引や個数サービスを実施し、基本価格を下げずに新価格への移行をスムーズにしました。EC(Electronic Commerce:商品・サービスを、インターネットを介して販売するビジネスモデル)では書面を商品に同梱して丁寧に周知しました。
また、独自ブランドの強みを活かし「当社の価格はこれです」という提示型の取引スタイルを貫き、こちら側が価格決定権を持てない取引先とは取引を断る方針でブランド一貫性を維持しました。
取組を行ったことにより得られた効果
BtoB・BtoC両チャネルで1.5倍程度の価格転嫁を実現し、原価高騰に対応した利益構造を確保することができました。
直売所では値上げ直後に数量が一時的に減少するものの、単価上昇により売上高への影響は限定的で、新価格に慣れた後は徐々に数量も回復しました。
ECでは全国発送による他社との比較において「まだ割安ですね」「値段を上げなくていいの?」という声をいただくなど、ブランド力による価格受容性の高さが確認できました。
BtoB取引先からも「他はいろいろ上がっているけど、価格を上げなくていいの?」といった理解ある声が増え、日々のコミュニケーションから顧客の温度感を把握することで心理的ハードルを下げながら価格転嫁を進められました。
また、BtoB薄利・BtoC厚利のポートフォリオ戦略により、事業全体として採算を維持し、持続可能な経営基盤を構築できました。
取組を行って感じたこと/ 今後取組を行う企業に対してのコメント
価格転嫁において最も大切なのは、品質を落とさず付加価値を提供し続けることと、誠実に説明することです。
価格を上げるだけなら簡単ですが、「お客様が喜ぶ付加価値をどれだけ提供できるか」が重要だと実感しています。
値上げ理由を数字を交えてきっちり説明し、どれだけ誠意を見せられるかが鍵となります。
見積書の段階で原価率が何によってもたらされたかを明確にし、資材費や人件費、原料費の高騰を具体的に伝えることで、一方的な転嫁ではない姿勢を示しました。
また、日々のコミュニケーションから顧客の声を把握し、「上げなくていいの?」という声が増えたタイミングを判断材料とすることで、適切な時期に価格改定を実現できました。ブランド力の構築と誠実な対応があれば、適正な価格転嫁は必ず実現できると考えます。
株式会社Z社
- 業種
- 農業、林業

