価格交渉・価格転嫁の取組事例
製品の裏側にあるストーリーを重視する取引先開拓で価格転嫁を達成
- 交渉の工夫
- その他
公開日
取組のポイント
- 耕作放棄地を減らすため農家と始めた事業での複合的コスト増により価格転嫁が必要に
- 農福連携・有機栽培・コーヒー豆かす堆肥化など製品背景のストーリーを訴求
- 価値を評価してもらえるバイヤーとの取引実現で高価格でも売れる販路を開拓
価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題
当社は2017年に大阪北部の耕作放棄地を減らすため、農家さんたちとゼロからオリーブ栽培を始めた農業ベンチャーです。
事業を展開する中で、人件費の上昇、円安による資材高騰、運輸コストの急増といった複合的なコスト増に直面しました。特にペットボトル飲料は運輸コストが大きな割合を占め、製造・配送・販売と各段階で輸送費がかかります。
農家さんから適正価格で茶葉を買い取り、有機栽培という手間とコストのかかる取組を続けるためには、どうしても価格転嫁が必要でした。
しかし従来の流通では、大手流通業者が4割の利益を得る一方で生産者は1割程度しか得られないという構造があり、適正価格での販売が困難でした。この課題を解決しなければ、農家の離農を防ぎ耕作放棄地を減らすという当社の目的自体が達成できない状況でした。
取組を行った内容
最大のポイントは「売る相手を選ぶ」という戦略です。価格と量だけを見て取引する従来型のスーパーではなく、当社の取組の価値を理解してくれるバイヤーとの取引に注力しました。
具体的には、農福連携(農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現していく取組)、有機栽培、抽出後のコーヒー豆かすを堆肥にする取組など、製品の裏側にあるストーリーを重視してくれる取引先を開拓しました。実際に現場を視察し、畑や搾油場、働く人々を見て、トータルで価値を評価してくれるバイヤーとの関係構築を優先しました。
また、取組を説明するカタログも英語・日本語版で作成し、製品より先に取組内容を訴求する構成にしました。栽培から加工、流通まで一貫して自社でコントロールすることで、中間マージンを削減し適正価格を実現しました。
取組を行ったことにより得られた効果
オリーブオイルは100mlを1,000円から1,500円へ、ペットボトルのオリーブ茶は当初から300円という強気の価格設定としましたが、六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズで展開する高級スーパーや全国の現場を見て回り、ストーリーのある商品しか扱わないバイヤーとの取引が実現しました。
来月には有名ホテル食材の候補として視察が予定されるなど、本物のバイヤーとの関係が構築できています。オリーブオイルの500円の値上げ当初は、消費者が購入しなくなり売り場が自然消滅することもありましたが、逆に高価格でも売れる販路へのシフトを進めました。
ロンドンのオリーブオイルアワードで高評価を得て、ドバイや香港への輸出も始まっています。
農家への適正な価格での買い取りを実現することで、オリーブ栽培戸数を増やし耕作放棄地を減らすという本来の目的を達成する道筋ができました。価格交渉での軋轢もなく、関係各所の苦労を反映した適正価格での事業展開が可能になりました。
取組を行って感じたこと/ 今後取組を行う企業に対してのコメント
今後の市場は両極化すると考えています。
「とにかく安く買いたい」層と、有機栽培のような手間とコストがかかる「本当に良いものを適正価格で買いたい」層です。中途半端が最も難しい時代になるでしょう。
有機栽培が価格転嫁されなければ誰もやらなくなります。実際に日本の有機栽培面積は先進国で最低の1%未満です。この15年で農家は200万人から100万人に半減しました。儲からないからやめるのです。
生産者への従来通りの向き合い方を続ければ、スーパーも成り立たなくなります。当社のような後発メーカーは、頭をこすりつけてあちこちに営業すると価格交渉で負けてしまいます。
国内市場だけでなくインバウンド・アウトバウンドを目指し、現場の努力や苦労を価格転嫁させる販売努力が必要です。生産者が日本からいなくならないよう、適正な価格転嫁を一緒に実現していければと思います。
株式会社ジャングルデリバリー
株式会社ジャングルデリバリーは、群馬県館林市を拠点に「千年続く、大地を創る。」を掲げ、耕作放棄地の再生に取り組む企業です。 主にオリーブの栽培・加工・販売を手がけ、高品質なオリーブオイルや茶、化粧品などを展開しています。地域農家への植樹指南や、最新の搾油技術の導入、企業連携による6次産業化を推進しており、循環型社会の実現と持続可能な農業モデルの構築を目指しています。
- 所在地
- 群馬県館林市本町3丁目1−10
- 業種
- 卸売業、小売業

