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価格交渉・価格転嫁の取組事例

値上げ交渉未経験から10%強の価格転嫁へ。よろず支援拠点の助言を得て粘り強い交渉で実現

  • 交渉の工夫
  • 支援機関サポート
  • その他

公開日 

取組のポイント

  • コロナ禍以降のコスト上昇で利益率が低下、社長交替後の初値上げも主要顧客との関係が課題
  • よろず支援拠点の助言で最低賃金・物価指数の変動幅を根拠とし、製品の販売開始年ごとに値上げ幅を算出
  • 交渉窓口の性格を踏まえ緻密に資料を改良、担当者への徹底的な配慮で10%強の価格転嫁達成

価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題

私どもが価格見直しを決断したきっかけは、コロナ禍以降の労務費、エネルギー費、消耗品費等のコスト上昇により利益率が低下していったことでした。

金属部品製造業として、電動工具部品、自動車部品、モーター部品を主要な営業品目としていましたが、コストが上昇し利益率が低下する中で、上昇分を販売価格に反映させるために値上げ交渉が必要な状況でした。

しかし、私が社長に就任してから一度も値上げ交渉をしたことがないので、準備と進め方が分からない状態でした。

さらに、主要顧客X社への売上依存度が約80%という状況にあり、顧客との力関係で不利な立場に置かれていました。このような課題を抱える中で、三重県よろず支援拠点のセミナーと個別相談会に参加し、中小企業診断士の支援を受けることを決断しました。

取組を行った内容

まず、根拠を示す資料の用意に取り組みました。最初は、現在の加工時間とコスト構造に基づいた販売価格の算出に挑戦しましたが、現状価格との整合性が取れず挫折しました。

そこで、別のアプローチとして、県内の最低賃金と国内企業物価指数の変動幅を根拠とすることにしました。損益計算書から費用を「労務費・法定福利費関係」「工場消耗品費・経費等」「その他」に分類し、それぞれの構成比を算出しました。

県内の最低賃金は、2011年を100とすると2024年には142(42%上昇)、国内企業物価指数は100から126(26%上昇)となっており、これらの変動幅と費用の構成比を加重平均した結果、コスト全体で約25前後の変動幅という数値をもとに顧客に提示する値上げ幅を決定しました。

さらに、製品の販売開始年ごとに変動幅と構成比の加重平均を計算し、より緻密な資料にブラッシュアップしました。

価格交渉においては、固い決意と粘り強さが最大のポイントとなりました。顧客の抵抗はとても強く、なかなか交渉のテーブルについてもらえず交渉開始までに時間がかかりましたが、あきらめることなく、まずは相手に交渉のテーブルについてもらえるように、粘り強く交渉を続けました。

取組を行ったことにより得られた効果

価格交渉の実施により、約10%強の価格転嫁を実現し、売上も増加することができました。

主要顧客X社への売上依存度が約80%という不利な状況を乗り越えて成果を出すことができたのは、交渉窓口への配慮を徹底したことが大きな要因でした。

交渉の窓口となる担当者の性格を踏まえて、根拠資料をより緻密にブラッシュアップし説得力を高め、その担当者が上司や決裁権者に説明しやすいように配慮しました。

今後の課題として、2026年度の価格交渉に向けて、前回の交渉で転嫁し切れていないコストアップ分をどのように転嫁するかという点と、見積価格を設定する時の基準作り(見積価格の適正化)による更なる経営改善に取り組む必要性を認識しました。

また、「適正な価格で適正な利益を確保する」時代において、値上げは「悪」ではないという考え方に変えることの重要性を実感しました。

有限会社I社

業種
製造業