価格交渉・価格転嫁の取組事例
対面交渉と段階的なアプローチで生果・加工品の価格転嫁を混乱なく実現
- コスト上昇調査
- 交渉の工夫
公開日
取組のポイント
- 果物全般の市場価格上昇を背景に生果加工品を約1割値上げ実施
- 取引先には直接説明を行うことで本気度を伝え理解を獲得
- 利益を従業員に還元、短時間正社員制度で子育てママの働き方改革も実現
価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題
あら川の桃を栽培し、規格外品(食品の品質基準を満たさない、または形状やサイズが不揃いであるために通常は廃棄される食品)を加工してピューレやゼリーなどの商品を製造・販売する当社では、人件費が年々上昇し経営を圧迫していました。
同時に、生産者の高齢化により果物全体の供給量が減少し、需要と供給のバランスから市場価格が上昇する構造変化が進行していました。
みかんや桃をはじめ果物全般の市場価格が上がる中、周囲の農家も価格改定を進めており、当社も適切な価格転嫁を行わなければ人件費上昇に対応できず、従業員の待遇維持が困難になるという課題を抱えていました。
取組を行った内容
生果および加工品について約1割の価格改定を実施しました。価格転嫁のポイントは、丁寧なコミュニケーションと段階的なアプローチです。
まず取引先に対して事前に書面で案内を送付し、その後営業電話で価格改定の趣旨を説明しました。これまで訪問していなかった先でも直接足を運び、対面で見積書を提示しながら本気度を伝えました。
BtoB(Business to Business:企業が企業に対して商品やサービスを提供する、企業同士のビジネス)向け加工品では、取引先から値上げの根拠提示を求められることもあり、資材費・人件費・原料費の高騰を説明しつつ、今後は原価計算を細分化し項目ごとの積算根拠を明示する方向で検討を進めています。
価格転嫁と並行して、自社の効率化努力も伝えることで、一方的な転嫁ではない姿勢を示しました。
取組を行ったことにより得られた効果
一部の取引先からは価格改定についていけないとの理由で取引終了もありましたが、新規取引先も増加しており、全体として大きな混乱なく価格転嫁を実現できました。利益率が向上したことで、従業員の給与引き上げや待遇改善に踏み切ることができました。
業務の中核を担う子育て中のママ社員に対して、フルタイム勤務が難しくても短時間正社員として処遇する就業規則の見直しを実施。時間制約があっても裁量ある仕事と正社員並みの待遇を両立できる環境を整えました。
こうした待遇改善により、従業員側でも「限られた時間で効率よく製造しよう」という意識変化が生まれ、生産性向上と働きやすさの両立が進んでいます。
取組を行って感じたこと/ 今後取組を行う企業に対してのコメント
価格転嫁で大切な点は、根気強く対面で交渉する姿勢だと思います。
取引高の多い先には必ず足を運び、見積書を先に提示することで誠意と本気度を伝えました。特に値上げ交渉を機に初めて訪問した取引先もあり、対面でのコミュニケーションが信頼構築に大きく寄与しました。
また、価格転嫁は単なる値上げではなく、従業員への還元という明確な目的があることを社内外に示すことで、理解を得やすくなります。
果物市場全体が上昇傾向にある今、周囲の動向を見極めながらタイミングよく適正価格への改定を行えば、大きな混乱は避けられます。対面での誠実な説明と、得られた利益を従業員に還元する姿勢が、価格転嫁成功の鍵だと感じています。
株式会社八旗農園
株式会社八旗農園は、和歌山県紀の川市にてブランド桃「あら川の桃」の生産・加工・販売を行う農業法人です。江戸時代から続く伝統的な栽培法と革新的な技術を融合させ、最高級ブランド「満天桃」など高品質な桃の栽培に尽力しています。 また、生産のみならず加工事業にも注力しており、自社工場にて素材本来の味を活かしたジュースやピューレ、ゼリーなどを製造しています。果物全般の小ロットOEM(受託製造)にも対応するなど6次産業化を推進し、安心・安全な商品提供を通じて地域農業の発展に貢献しています。
- 所在地
- 和歌山県紀の川市桃山町元266-3
- 業種
- 農業、林業

