価格交渉・価格転嫁の取組事例
伝承野菜の安売りを止め、地域活性化の核へ昇華
- ブランド力向上
- 交渉の工夫
- その他
公開日
取組のポイント
- 買取側から生産者へ50円値上げ提案の逆転発想で交渉
- 値上げを反対していた生産者を東京の高級店に連れて行きブランド化を体感
- 1袋1000円の高付加価値で一般もやし30円と差別化に成功
価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題
約400年の歴史を持つ大鰐温泉もやしは、江戸時代から平成15年頃まで、農家と八百屋の委託契約で取引されていました。農家が朝収穫したもやしを八百屋に持ち込み、夕方に売れ残りを確認して売れた分だけ代金を受け取り、残りは近所に配るという仕組みでした。
この仕組みでは、天候不良などで収入が極めて不安定となり、後継者が育たず生産者が減少の一途をたどっていました。このままでは400年続く伝承野菜が途絶えてしまうという強い危機感から、価格転嫁を含む事業改革に踏み切りました。
取組を行った内容
当時130円台だった仕入れ価格を180円に引き上げ、全量買い取りへと取引の仕組みを根本から変革しました。
取り組みのポイントは、通常とは真逆の価格交渉です。買い取る側から生産者に対し「50円値上げしてください」と提案し、その代わりに全量買い取りの仕組みに転換しました。
組合長との交渉は2〜3年を要し、当初は「値上げをしたらもっと残る。責任を取れるのか」と強く反対されました。しかし、粘り強く交渉を重ね、生産者を東京に連れて行き、高級レストランで数千円の料理に使われている現場や、高価格でも売れている実態を見てもらうことで、ブランド化の意義を理解してもらいました。
販路開拓では、首都圏の高級百貨店との取引を確立し、料理研究家や一流シェフへの営業、メディア露出を同時進行で進めました。「信頼できるところにしか卸さない」という姿勢を貫き、産品のブランディングにもつなげました。
取組を行ったことにより得られた効果
全量買い取りと価格引き上げにより、生産者の収入が安定し、後継者育成の基盤ができました。徹底したブランディング戦略により、一般的なもやしが1袋30円程度のところ、大鰐温泉もやしは1袋1000円という高付加価値商品として定着しました。
販路は関東・関西・九州まで拡大し、地方創生の先進事例として大鰐町の名を全国に広める効果も生み出しました。
また、「有料サンプルでもいい」と言ってくれる料理人とのみ取引する方針が定着し、価格を維持しながら適切な取引先との長期的な関係を構築できました。
取組を行って感じたこと/ 今後取組を行う企業に対してのコメント
いくら田舎の小さな町でも、人も商品も安売りしてはいけないと考えています。生き残るためだけでなく、勝ち残るためにはすべてがブランドとして評価される取り組みが必要だと痛感しました。ブランディングには時間がかかりますが、一度確立すれば、適正価格での取引が当たり前になります。
私たちは、400年の歴史を持つ伝承野菜を途絶えさせないという強い思いと、この食材を価値ある地域活性化の核にするという確信を持って取り組みを行ってきました。価格転嫁についても、生産者と消費者の双方が納得できる価値の創造から始めていくことが大切だと感じています。
プロジェクトおおわに事業協同組合②
青森県大鰐町の地元有志により設立された、100%民間出資の地域商社。「プロジェクトおおわに事業協同組合」から分社化する形で事業活動を開始しており、特産品「大鰐温泉もやし」のブランド化や販路開拓、新たな特産物開発、6次産業化といった事業を同組合から継承。さらに、個人商店や宿泊施設の事業承継にも新たに取り組み、湯の町の再生を目指している。
- 所在地
- 青森県南津軽郡大鰐町大字長峰字下川原9-92
- 業種
- 卸売業、小売業
- 従業員数
- 45名(パート従業員を含む)
- 資本金
- 出資金:370万円 (組合のため)

