価格交渉・価格転嫁の取組事例
公的支援を活用した綿密な原価計算で主要業務の単価アップを実現
- コスト上昇調査
- 交渉の工夫
- 支援機関サポート
- 労務単価調査
公開日
取組のポイント
- 約5年間遡り実単価と損益分岐点を比較し採算性を数値化
- 春闘の中小企業平均賃上げ率を上乗せした形で交渉資料を作成
- 設計者経験年数も資料に盛込みベテラン担当でも不採算であることを明示
価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題
当社は愛知県三河地域で自動車部品の金型設計を専門としていますが、2008年頃から単価が全く上がらない状況が続いていました。何十年も価格交渉を試みても取り合ってもらえず、取引停止の可能性から動き出せずにいることが大きな課題でした。
転機は、約3年前に主な取引先の大手メーカーが公正取引委員会から価格転嫁が進んでいない企業として名指しされたことでした。そのメーカーは方針を転換し価格転嫁が進みましたが、もう一つの大型取引先とは商社経由のため、どのように交渉の窓口を開くかが次の課題となりました。
取組を行った内容
転機となったのは、大手自動車メーカーと愛知県よろず支援拠点が共催した価格転嫁セミナーでした。発注企業側からの流れを感じ、よろず支援拠点に相談し、月1回の伴走支援を受けました。
過去約5年間遡って実単価(実際にかかった時間とコスト)を調査し、損益分岐点と比較しました。設計の難易度が高くなっているのに単価が上がらない状況を数字で示し、さらに2025年春闘の中小企業平均賃上げ率を上乗せした形で交渉資料を作成しました。
設計者の経験年数も資料に盛り込み、ベテラン設計者が担当しても採算が取れない状況を明確化。交渉前には現場の責任者の方へ事前に資料を共有し根回しを行うなど周到に準備しました
取組を行ったことにより得られた効果
弊社の主要業務3種すべてで価格転嫁が認められ、売上の7割以上を占める主力の設計業務では約12%の単価アップを実現しました。交渉は本社への訪問1回で完了し、約1ヶ月で調整が完了というスピーディな決着となりました。
新単価は10月発注分から適用され、12月以降の売上に反映される予定で、今後は昇給などで社員への還元を検討しています。また、ホームページリニューアルや健康経営への取り組みなど、企業価値の向上にも注力しています。
取組を行って感じたこと/ 今後取組を行う企業に対してのコメント
売り上げ割合の高い大企業への価格交渉は、非常に大きなハードルでした。しかし、よろず支援拠点の担当者に何度も背中を押され、丁寧な指導を受けながら資料を作り上げたからこそ、交渉に臨むことができました。
公的な専門機関に相談すると、損益分岐点の計算や根拠の示し方など、交渉資料のレベルが確実に向上します。商社からも「交渉は根拠が最も重要で、数字の裏付けを説明できることが一番大切」との助言を得ました。
世の中の流れも変化し、パートナーシップ構築宣言など発注企業側の姿勢も変わってきています。諦めずに専門家の力を借りながら、適切なタイミングで交渉に臨むことが重要だと実感しています。
株式会社N社
- 業種
- 学術研究、専門・技術サービス業

