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価格交渉・価格転嫁の取組事例

顧客属性の深掘りで 明確なポジショニングを獲得

  • コスト上昇データの作成
  • ブランド力向上
  • 市場調査

取組のポイント

  • 顧客の消費傾向を踏まえた価格改善
  • 地域に根差したブランディング

価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題

仕入価格の上昇顧客構造の変化が価格見直しの主要因となりました。2018年と比較して生ビールケグの仕入価格が7%、牛肉の仕入価格が20%上昇し、原価率の悪化が経営を圧迫していました。

加えて、山形県への来訪が多いアジア圏観光客には飲酒をしない傾向が強く、従来の収益モデルであった利益率の高いアルコール飲料の販売が低迷していました。この顧客構造の変化により、食事中心の利用客が増加する一方で、客単価や利益率の確保が困難になるという構造的な課題が発生しました。

特に観光客の増加は来店数の増加をもたらす一方で、従来の地元客向けビジネスモデルでは対応しきれない新たなコスト要因(多言語対応、説明時間の増加等)も生じており、価格体系の抜本的な見直しが急務となっていました。

取組を行った内容

価格改定に向けて、まず顧客属性の詳細な分析と市場データに基づく戦略立案を実施しました。地元客については宴会実施率が2019年の78.4%から2024年には59.6%に減少している一方、一人あたりの飲食費は45,150円から66,438円へ47%増加しているという市場データを把握しました。

この分析結果を踏まえ、地元客向けにはコース料理+飲み放題プランを5,500円から6,500円(18%上昇)に設定し、宴会需要の減少を単価向上でカバーする戦略を採用しました。

訪日外国人については、飲み代平均が1回あたり4,237円、1ヶ月平均6,002円という消費行動データと、メニュー注文時の困った経験が65.8%という調査結果を活用。価格よりも安心感(わかりやすさ)が重要という仮説のもと、ソフトドリンクを300円から500円(66%上昇)、焼きすきを1,800円から2,178円(21%上昇)に設定し、写真付きメニューやナンバリング、スマホ対応フォントなどの工夫を併せて実施しました。

取組を行ったことにより得られた効果

属性別価格戦略の実施により、同店は「地元民が薦める店」として明確なポジショニングを獲得しました。山形牛を扱う専門性と訪日外国人の食事スタイルへの理解が評価され、自治体事業の招請ツアーやモニターツアーにおいて選定される機会が増加しています。

これにより、地元客からの接待や紹介での利用が促進され、安定的な集客基盤を構築することができました。価格改定後も顧客離れを最小限に抑えながら、収益性の改善を実現しています。

しかし、新たな課題として観光客向けのプロモーション体制の不足が明らかになりました。高単価が見込める層へのリーチが不十分であることや、アジア圏でも台湾・シンガポールと中国、さらにアジアと欧米豪では旅行スタイルや価値観が異なるため、限られたリソースでの「選択と集中」によるプロモーション戦略の確立が今後の課題となっています。

取組を行って感じたこと/ 今後取組を行う企業に対してのコメント

今回の価格転嫁は、商品やサービスを変えずに顧客属性ごとの価値を再設計することで実現できた点が大きな成果でした。現場での変更はメニューの価格と言語表記のみで、オペレーション負担を最小限に抑えることに成功しています。
また、仕入れや人件費の高騰は厳しい状況でしたが、自社の立ち位置や顧客への価値提供を見直す良い機会となりました。
価格改定後は地元客と観光客の交流が生まれやすく、地元客の利用シーンがより明確になったことも大きな変化です。価格転嫁を進める上では、原価高騰など自社の事情と、市場や顧客ニーズといった外部環境を数値化・言語化し、両者の着地点を見つけることが重要です。長年の経験や勘に頼るだけでなく、調査データや顧客の声を踏まえることで、新たな視点や判断の根拠が得られます。定量的に現状を把握することで定性的な実態との差も明確になり、両面から対策を設計することが、今後の価格戦略において大切だと考えます。

 

 

 

 

 

合同会社スケッチ

山形駅前に拠点を構える企業で、山形牛を中心に飲食と食肉加工を展開しています。陶板で片面7秒ずつ焼き、特製ダレと卵で味わう「焼きすき」が看板料理です。また、牛では珍しい生ハムやベーコンも提供しており、県産ワインと合わせ楽しんでいただけます。コースから単品まで柔軟に楽しめるほか、自家製ビーフジャーキーやコーンビーフの製造も行っており、観光客のみならず地元の方からも支持をいただけています。

所在地
山形県山形市幸町5番2号
業種
宿泊業、飲食サービス業