価格交渉・価格転嫁の取組事例
「調整費」という 新たな発想で挑んだ価格転嫁
- コスト上昇調査
- ブランド力向上
- 交渉の工夫
取組のポイント
- 「調整費」概念による柔軟価格枠組み
- 為替変動リスクの価格反映仕組み構築
価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題
輸入業という事業特性上、原材料費の高騰と為替レートの変動が仕入れ値の大幅な上昇に直結し、収益性が深刻に悪化していました。これに加えて、競合他社が価格転嫁を進める業界全体の動きがあり、従業員のモチベーション低下も生じていました。
情報通信業として、発注元企業からの価格交渉申し入れを受ける一方、自社からも価格転嫁を申し入れる必要があり、為替変動リスクを抱えながらの双方向での交渉という困難な状況に直面しました。そのため、仕入れ値の上昇分を適切に価格へ反映させ、持続可能な事業運営を実現するための戦略的な対応が急務となっていました。
取組を行った内容
価格交渉に臨むにあたり、まず引き合い段階での取引条件確認を徹底し、自社製品の単価計算を行うことで、客観的な根拠を整備しました。さらに、業界の動向や取引先の情報を収集し、戦略的に交渉順を検討した上で、書面による正式な申し入れを行いました。
特に工夫したのは、価格改定分を「調整費」と位置づけ、一定期間後に再度見直す柔軟な条件を提示したことです。これにより、顧客の理解と受け入れを促進しました。
また、交渉と並行して、ウェブサイトでの積極的な情報発信によって透明性を高め、製品・サービスの高機能化や新機能開発で付加価値を創出しました。加えて、製品単価表と見積書を新規作成し、事業分野の拡大や認証取得によって競争力強化も図りました。
取組を行ったことにより得られた効果
「調整費」という柔軟なアプローチと新機能開発による付加価値向上を組み合わせることで、価格転嫁を成功させました。その結果、売上増加と利益率改善が実現し、持続可能な事業基盤を構築できました。
この取り組みにより、輸入業特有の課題であった為替変動リスクを適切に価格に反映する仕組みを確立できたことも大きな成果です。また、ウェブサイトでの積極的な情報発信によって顧客との信頼関係を強化し、新機能開発による差別化で競争優位性も確立しました。
特に「調整費」という概念の導入は非常に有効でした。これにより、今後の継続的な価格調整に向けた柔軟な枠組みが築かれ、為替変動や市場環境の変化に迅速に対応できる価格政策を確立することができました。
株式会社H社
- 業種
- 情報通信業