価格交渉・価格転嫁の取組事例
顧客との信頼関係を維持する 段階的価格改定戦略
- コスト上昇調査
- ブランド力向上
- 交渉の工夫
取組のポイント
- 10%×複数回の段階的価格改定
- 電話・LINE・メールによる多様なコミュニケーション
価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題
原材料費、エネルギー価格、物流費、人件費が全面的な高騰を続けた結果、収益性は大幅に悪化しました。なかでもサラダ油が短期間で3回も値上げされるなど、度重なるコストアップへの対応が急務となっていました。
卸売・小売業として、BtoB・BtoCの両方向での価格転嫁が必要な状況でした。発注元企業から価格交渉の申し入れがある一方で、自社からも価格転嫁を申し入れる必要があり、さらに一般顧客向けの値上げも同時に実施しなければならないという、複雑な状況に直面しました。
したがって、急激で頻繁なコスト上昇に対し、顧客との関係を維持しながら適切な価格転嫁を実現する戦略が最大の課題でした。
取組を行った内容
一度に大幅な値上げを避けるため、1回あたりの値上げ幅を10%程度に抑え、1年後に再度改定する段階的な価格転嫁戦略を採用しました。この戦略に基づき、まず取引先の経営状況や業界動向をデータとして収集し、交渉順を戦略的に検討しました。そして、引き合い段階での取引条件確認を徹底し、原価計算と自社製品の単価計算を実施することで、客観的な根拠を整備しました。
また、顧客との関係維持のため、書面での正式な交渉申し入れと説明資料作成に加え、電話やLINE、メールなど多様な手段で細やかな説明を重ねました。さらに、顧客向けプライベートブランド(PB)商品を開発することで付加価値を創出し、事業領域拡大や新市場開拓にも取り組みました。
取組を行ったことにより得られた効果
段階的な価格改定戦略により顧客の理解を得ながら価格転嫁を成功させ、売上増加、利益率改善、そして従業員の賃上げを実現しました。
特に、差別化を図ったプライベートブランド(PB)商品は、「ストーリー性を持たせた商品」として売上数量を大幅に伸ばしました。多様なコミュニケーション手段を駆使することで顧客との信頼関係を維持しつつ、価格改定を達成した結果、新規の販路や顧客の拡大にもつながりました。
事業拡大に向けた投資も可能となり、認証取得やEC参入によって競争力を強化。これにより、急激なコスト変動にも柔軟に対応できる戦略的な価格政策を確立し、顧客満足度を維持しながら持続可能な収益構造を構築することができました。この段階的アプローチという創意工夫は、卸売・小売業における価格転嫁の新たなモデルを示すものとなりました。
株式会社G社
- 業種
- 卸売業、小売業