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価格交渉・価格転嫁の取組事例

30年据え置きの価格を是正 損益表公表で活気を取り戻す

  • コスト上昇調査
  • 交渉の工夫
  • 支援機関サポート
  • 労務単価調査

公開日 

取組のポイント

  • 損益表を包み隠さず公表し収益ひっ迫を具体説明
  • 30年間据置きの事実提示で顧客理解を獲得
  • ボーナス支給が可能になり従業員に活気が戻る成果

価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題

当社は防錆用電気亜鉛メッキ処理委託業を展開していますが、原材料費、エネルギー価格、人件費の高騰により収益性が大幅に悪化しました。薬品類が20~30%、運送費も上昇する一方、ここ30年あまりコストダウンの連続で値上げを一切実施してこなかったため、収益がひっ迫する危機的状況に陥っていました。

自動車業界の厳しい価格圧力の中で、適正な利益確保が極めて困難となり、設備・システム等への新たな投資も必要なことから、自社から積極的に価格改定交渉を申し入れることを決断しました。

取組を行った内容

価格交渉に向けて、まず引き合い段階の取引条件確認を徹底し、原材料費や労務費のデータ収集に基づく原価計算を実施しました。その上で、書面での交渉申し入れと説明資料を作成しました。

最も重要だったのは、当社の損益表を包み隠さず公表し、収益のひっ迫状況を具体的に丁寧に説明したことです。30年間価格を据え置いてきた事実と、薬品類などの20~30%上昇という現状を具体的に示しました。また、外部アドバイザーの助言も活用し、労務費単価表や代替案・新商品の提案資料を作成しました。

同時に、リスク分散のため、事業分野の拡大・他業種への参入にも取り組みました。

取組を行ったことにより得られた効果

これらの取り組みにより、価格転嫁を成功させ、売上の増加と従業員の賃上げを実現しました。特に、ボーナスなどを支給できるようになったことで、従業員のモチベーションが向上し、活気が出たことが重要な成果です。損益表の公表と30年据え置きという事実が、顧客の理解を得る上での大きな成功要因となりました。

しかし、価格転嫁に応じてもらえたのは一部の顧客であり、値上げ率も要求の10%以上に対し3~5%程度と低い水準でした。さらに、一部の顧客が今回の値上げで全てが終了したような認識を持っている傾向があり、この認識が蔓延すると、今後の継続的な価格転嫁の道が遠のく可能性があることを懸念しています。

U株式会社

業種
製造業