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価格交渉・価格転嫁の取組事例

段階的値上げと販路最適化で収益安定を実現

  • コスト上昇調査
  • コスト見直し
  • ブランド力向上
  • 交渉の工夫

公開日 

取組のポイント

  • 前年協力取引先には翌年自社吸収の段階的改定採用
  • 加工品は卸先ごと変えず一律価格で管理を明確化
  • 生鮮品は出荷先選択で収穫量変動に応じた柔軟管理

価格交渉・価格転嫁を行うきっかけ/ 企業で抱えていた課題

きっかけは、業務から私生活まで波及する物価高騰に直面したことです。肥料や人件費に加え、ビニールハウスの鉄骨価格まで上昇し、農業特有の設備投資コストも増大しました。これらのコスト増は削減や吸収では持続不可能であり、価格改定が唯一の解決策でした。

特に加工品は外注している包装材や加工費の値上がりが著しく、原価計算が明確な分、価格転嫁の必要性が顕著でした。一方、生鮮トマトは収穫量が不安定なため、原価に基づいた価格設定が困難という課題がありました。

主力商品の出荷が11月から本格化するため、それまでに価格戦略を確定させる必要があり、取引先との関係維持を考え毎年の値上げを避けたいという配慮とのバランスが求められました。

取組を行った内容

基本方針として段階的な価格改定を採用し、前年に協力いただいた取引先には翌年自社でコストを吸収するなど、関係性に応じた柔軟な対応を行っています。

加工品については、卸先ごとに価格を変えず一律の価格設定を目指し、外注コストの上昇を理由に顧客への説明を行いました。価格に納得できない取引先とは、ある程度割り切って取引を見直すこともやむを得ないと判断しています。

生鮮トマトについては、自社販売分に利益の幅を持たせ、収穫量に応じて価格許容度の高い顧客への出荷量を調整するなど、柔軟な収益管理を実施しました。

販売チャネルでは、個人向けEC販売の比重を抑え、全国の仲卸業者との直接取引と、企業の福利厚生カタログ等のクローズドサイト販売に注力し、まとまった注文に効率的に対応する体制を構築しました。

取組を行ったことにより得られた効果

段階的な価格改定により、取引先との信頼関係を維持しながら適正な利益を確保できました。加工品では一律価格設定により価格管理が明確になり、顧客への説明も容易になりました。生鮮トマトでは、出荷先を選択できる体制を整えたことで、収穫量の変動に応じた柔軟な収益管理が可能となりました。

また販売チャネルの最適化により、少量多件数の発送にかかる手間を削減し、まとまった注文に集中できる体制になり、効率的な運営体制を構築できました。コロナ禍で急増したEC顧客の中から、繰り返し購入してくれる顧客との関係も構築でき、全国の新規顧客との接点を持つことができました。

取組を行って感じたこと/ 今後取組を行う企業に対してのコメント

価格交渉で最も重要なのは、日々の信頼関係の積み重ねです。自社も仕入れ先から値上げの相談を受ける立場であり、その際に取引を継続するのは価格以外の理由があるからです。普段からお互いに助け合い、困った時には柔軟に対応し、誠実なやり取りを重ねてきたからこそ、値上げのような厳しい交渉も受け入れられます。

また、商品のブランディングも重要です。トマトという一般的な商品だからこそ、「甘いよりうまい」といったコンセプトや見せ方、伝え方が差別化につながりました。特にネット販売では文字と写真が第一印象を決めるため、まず手に取ってもらう入り口づくりが大切です。

価格交渉のために戦略的に関係を築くのではなく、良いものを作り、誠実に対応することで信用は自然と伝わります。人間性はもちろん、行動の積み重ねこそが交渉力の源泉であると再認識しました。

株式会社美トマト

宮崎県宮崎市に拠点を置く農業法人である。同社は「くす美トマト農園」を運営し、高品質なフルーツミニトマトの登録商標ブランド「美トマト」の生産・販売を手掛けている。「あま~い」よりも「うまいっ!」と言われるような品質重視のトマトづくりを追求し、宮崎の太陽と水・土の力を活かした本物のトマトを生産している。

所在地
宮崎県宮崎市郡司分甲1041
業種
農業、林業